「ねえ、こんなつまらないパーティー、あと4,5人誘って抜け出さない?」
唐突に女が声をかけてきた。
「4,5人誘って?」
「そう、4,5人誘って。そして、セパタクローをしましょう」
「セパタクローを?やるの? 今から?」
「そうよ、今からよ。やるでしょう?」
「うーん………まあ、いいだろう」
「じゃあ決まりね」
「おい、ちょっと待て!」
突然、横にいた男が話に割り込んできた。
「何なのよ、あなた」
「俺はこのパーティーの主催者だ。おまえたち勝手なことばかり言うんじゃねえぞ! さっきから聞いていれば、人を侮辱するようなことばっかり言いやがって!セパタクローなんてわざわざパーティーを抜け出してまでやるような競技かよ!」
男は僕たちを睨みつけながら怒鳴った。
僕はその男を見つめた。年齢は50代半ばくらいだろうか。身長はそれほど高くないが、体格はかなり良く筋肉質である。髪は短く刈り上げており、眉毛も剃り上げられている。まるでスポーツマンのような外見の男だ。しかし、顔立ちからは知性というものが全く感じられない。恐らく頭の悪い男なのだろう。
「あら、主催者の方なの?よかったらあなたもどうかしら?セパタクロー」
男は黙っている。
「見たところあなた体格もいいし、見どころがありそうじゃない」
「そうなのか…?」
まんざらでもないらしい。
「ええ、私の目に狂いがなければ、セパタクローをやればそれなりの選手になれるはずよ、興味があるなら指導してあげるわ」
「い、いいのか…?」
「いいわよ、ついてらっしゃい」
「ああ…」
虚を突かれた男は戸惑いながらも女と僕の後をついてきた。やはり見立て通り頭の悪い男のようだ。