「ちょっと何なんですか!?警察呼びますよ!」
女がそう叫ぶと変態は言った。
「もう呼んでますよ」
するといつの間にか変態の後ろには警察官が立っていた。そして、その警察官が手錠を取り出し変態の手にかけようとした時だった。
「なっ……!?」
女性は警察官の腕をつかみそのまま腕を引きちぎったのだ。
「うわぁああああ!!」
警察官の悲鳴に驚いた変態は腰を抜かしてしまった。
「あなたも死になさい」
そう言って変態の方へ近づく女性。だが、次の瞬間、変態の目の前で何かがぶつかり合った音がした。それはまるで金属と金属がぶつかったような音だ。
「あら?また新手?」
そこには1人の男性がいた。見た目からして年齢は50代くらいだろうか。髪色は黒で長さは肩にかかる程度の長さである。身長は140センチほどで細身の中年男性であった。
「あなたも邪魔する気なら容赦しないわよ」
そう言って女性が近づいてくるのと同時に、男性の体が赤く光り出した。変態はその光景を見てすぐにわかった。彼もまた変態なのだと。それもただの変態ではない。おそらく上級変態だ。
「そこの警察官を連れて早く逃げてください」
上級変態が変態に向かって言う。
「しかし……」
「いいから早く!」
そう言われて変態は警察官に肩を貸しながら逃げるようにその場を離れた。逃げながら変態は、自ら警察官を呼んだ程度で自身を”無敵の変態だ”などと思っていたことを恥じた。そして彼は思った。あの人のような真の変態になりたいと。気がつくと変態は、全裸の上に羽織ったトレンチコートのボタンを首元までしっかりと閉めていた。裸にトレンチコートといういかにも典型的な変態といった感じの服装が急に恥ずかしくなったのだ。
そうして変態はRight-onに行った。彼の知っている服屋といえば、高校生の時に母親に連れてきてもらったRight-onくらいしかなかったのだ。Right-onで彼は英語がたくさん書かれたTシャツとリバーシブルのパーカー、裾の折り返しにチェックの柄のついたベージュのチノパンを購入した。そして彼は急いで着替えると、先ほどの公園に戻った。しかしそこには上級変態の男性の姿はなかった。
「あの人は一体誰だったんだろう……」
変態は疑問を抱きつつも、先ほど買った服を着たまま家に帰った。その姿を見た母親は言った。
「あんたそれどこで売ってたの?全然知らないブランドだけど」
「いや、これは知り合いにもらったんだよ。ほら、この前友達と一緒にカラオケ行った時にさ」
嘘をつく変態。本当は自分で買ったものなのに……。
「あーはいはい。そういうことね」
母親は納得してくれたようだ。こうして、変態は新たな一歩を踏み出すことができたのだった。
完